相続人の9割が苦労する相続準備~改製原戸籍の取得~
相続を開始したとき、相続人を確定するために必要になってくるのが、被相続人や相続人に関する戸籍です。戸籍は市町村役場で取得できるのですが、相続で必要となる古い戸籍は日常で使うこともないため、取得だけでも大変な負担となり、相続準備において戸籍、特に改製原戸籍の取得は大きなウエイトを占めます。今回は、「改製原戸籍の取得」について解説します。
被相続人に関する一生分の戸籍が必要
相続が開始されたときにまず必要なのが、「相続人」と「相続財産」を確定させることです。原則として、配偶者、子ども、子どもがいない場合は両親、両親もいなければ兄弟姉妹が相続人となるため、まずは被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した全部の戸籍を取得、相続人の存在を調べなければなりません。
さらに、相続人に該当する子どもと兄弟が被相続人よりも前に死亡している場合には、代襲相続(被相続人から見て孫、ひ孫、甥、姪などが相続財産を受け継ぐこと)が生じます。この場合は孫の存在を調べなければならないため、相続人の出生から亡くなるまで、すべての繋がる戸籍(除籍謄本、現戸籍、戸籍謄本)も必要となってきます。
改製原戸籍の取得は手間も時間もかかる
-
戸籍はいくつかの改正を経て現在の様式となり、記載方法もその度に変更されています。これを改製といい、現在の戸籍よりも前に作成されたものを「改製原戸籍」と呼びます。相続人を確定する際には、被相続人が亡くなった時点の戸籍から出生まで遡り、親族関係を把握する必要がありますので、辿っていく過程で、この改製原戸籍の取得が必要な場合がほとんどです。
しかしながら、手書きで書かれていたり、現在とは異なる字体が使用されていたりして中には読むのに難解なものもあります。また、婚姻、離婚、死亡などの理由で戸籍から抹消されていた場合、改製後の戸籍にはそれが引き継がれていないため、相続人を見落としてしまう恐れがあります。たとえば結婚や離婚、引っ越しなどで本籍地を移転していれば、それだけ取得する戸籍の数も増えます。相続人が多い家族や、婚姻、離婚を繰り返して家族関係が複雑な場合、取得に数ヵ月かかることも珍しくないのです。
また、市町村の統廃合があった場合、現在管轄している役所を確定すること自体が大変なことです。
-
このように、相続手続きに欠かせない改製原戸籍。その取得にはかなりの手間や時間、費用が掛かります。相続手続きの前提となる相続人調査で時間をかけないためにもご不安な方は専門家にお任せする事をお勧めします。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士 オールシップ
代表
市山 智
- 保有資格
司法書士 行政書士
- 専門分野
-
相続・遺言・成年後見・民事信託
- 経歴
-
相続・遺言・生前対策を中心に取り扱う「司法書士法人・行政書士オールシップ」の代表。相続関係の手続きや成年後見等の財産管理など、年間300件以上の相談に対応。分かりやすく・笑顔で相談に乗れるよう心掛け、迅速・丁寧な対応で依頼者からの信頼も厚く、リピートや紹介での依頼も多い。相続関連書籍の執筆協力やセミナー・研修等の講師実績も多数あり。