高齢者の遺言書作成で気をつけるべきポイントは?
遺言書を残す方が高齢で、「認知症」や「判断能力の低下」が疑われる場合は注意が必要です。
トラブル防止に有効な遺言書が、トラブルの元凶になってしまう恐れがあるのです。
遺言書を作成する人が高齢で、認知症や判断能力の低下が疑われる場合は、後々になって「遺言書は本当に有効なのか?」という争いが相続人の間で起こることがあります。
認知症と明確に診断されていなくても「物忘れが増えた」「理解に苦しむ行動を取ることが多くなった」というような「グレーゾーン」の高齢者も少なくありません。
よって、高齢者が遺言書を作成する際は、「遺言を作成できる判断能力があるか?」「有効な遺言書を作成できるか?」という問題をクリアする必要があります。
「遺言を作成できる判断能力」とは、「遺言がどのような意味を持ち、どのような法的効力を発揮するかを理解できる能力」を指します。この遺言能力がない状態で作成された遺言書は無効になります。
民法では「15歳に達した者は遺言をすることができる」(民法961条)としていますが、「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」(民法963条)と遺言能力を要求しています。
医師の診断がトラブル回避につながる
高齢者が遺言書を作成する際は、以下のような点に注意しましょう。
●公正証書遺言で残す
自筆証書遺言は、法的要件の不備で無効になるリスクがあります。また「この筆跡は本人のものではない」とか「誰かが横でささやいて作らせた」などという疑いをかけられかねません。
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成し、証人が立ち会います。そのため、自筆証書遺言で発生するような疑いは起こりにくくなります。また、第三者による変造や偽造、隠匿の恐れもありません。
●医師の診断を受ける
遺言能力に不安がある場合、判断能力の程度を客観的に証明するため、認知症の症状を判断できる病院で診断を受けて、診断書を作成してもらうことをお勧めします。
認知症と診断されていない高齢者でも、診断を受けておくと、トラブル回避につながります。
●遺言書作成時は相続人全員に配慮する
遺言書の作成にあたっては、できることなら、相続人と情報を共有しておきましょう。
何も知らずに、亡くなった後に遺言書が出てくるよりも、事前に話をしておく方が相続人の心づもりができます。
また、話をする際に相続人の反応も見られるため、反応次第では、遺言書の内容も工夫することができます。
相続人に話はせずに遺言書を作成する場合は、「付言事項」(遺言書に付け加えられるメッセージ)を工夫することをお勧めします。
財産分けのことだけを記載するのではなく、しっかりと「あなたの想い」を記載することで、無用な争いを避けることができます。
認知症や判断能力の低下が疑われる高齢者が遺言書を作成するときは、慎重な対応を要します。
専門家に相談して、適切なサポートを受けましょう。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士 オールシップ
代表
市山 智
- 保有資格
司法書士 行政書士
- 専門分野
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相続・遺言・成年後見・民事信託
- 経歴
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相続・遺言・生前対策を中心に取り扱う「司法書士法人・行政書士オールシップ」の代表。相続関係の手続きや成年後見等の財産管理など、年間300件以上の相談に対応。分かりやすく・笑顔で相談に乗れるよう心掛け、迅速・丁寧な対応で依頼者からの信頼も厚く、リピートや紹介での依頼も多い。相続関連書籍の執筆協力やセミナー・研修等の講師実績も多数あり。