遺言書の内容と異なる遺産分割協議はできる?
父親が亡くなり、遺言書が見つかりました。
しかし、相続人みんなで話した結果、遺言書の内容どおりに相続を進めずに、話し合って遺産分割を行いたいと思っています。
それは可能なのでしょうか?
遺言書の内容と異なる遺産分割協議をすることは可能です
遺言書に書かれた内容は、被相続人が亡くなったときに効力が発生します。
しかし、相続人の全員が遺言書の内容を把握したうえで、遺言書とは異なる内容の遺産分割を行うことに合意している場合には、遺言書の内容と異なる内容で遺産分割協議をすることができます。
条件によっては遺言書の内容と異なる遺産分割ができないこともある
以下の場合には遺言書と異なる遺産分割協議はできません。
(1)相続人全員の同意が得られていない場合
(2)相続人以外の受遺者がいて、その受遺者の同意を得られていない場合
(3)被相続人が遺言書の内容と異なる遺産分割協議を遺言書で明確に禁止している場合
(4)遺言執行者が設定されており、遺言執行者が遺言と異なる遺産分割協議に同意しない場合
※(4)の場合には、一旦遺言書どおりの相続を行った上で、新たな契約として財産の移転を行う必要があります。
遺言書と異なる遺産分割協議で税金はどうなる?
遺言書の内容が相続人のみ場合
相続税の計算においては、遺言書と異なる遺産分割協議を行った場合でも、「贈与」や「交換」と考えられることはなく、基本的には、通常の相続での遺産分割協議を行った場合の相続税と同じ計算とされています。
相続人ではない受遺者がいる場合は要注意
例外として、相続人ではない受遺者がいる場合には注意が必要です。
例えば、遺言書で、相続人ではない人に「A不動産を遺贈する」とされていたにもかかわらず、相続人の話し合いによって、この相続人ではない人が「B不動産を取得する」ことになった場合には注意が必要です。
なぜなら、相続人ではない受遺者は、A不動産をもらう権利はありますが、そもそも遺産分割協議に参加する権利・立場はありません。
そのため、「遺産分割協議で、やっぱりA不動産ではなくB不動産をもらう」という考え方ができず、「B不動産を”遺産分割(相続)”で取得した」とは解釈できません。
そのため、相続人ではない受遺者は、「A不動産の遺贈」を受けた後に、「B不動産と交換」したと解釈せざるを得ない場合があります。
「交換」と解釈された場合は、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されますし、税金上かなりの注意を図る必要があります。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士 オールシップ
代表
市山 智
- 保有資格
司法書士 行政書士
- 専門分野
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相続・遺言・成年後見・民事信託
- 経歴
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相続・遺言・生前対策を中心に取り扱う「司法書士法人・行政書士オールシップ」の代表。相続関係の手続きや成年後見等の財産管理など、年間300件以上の相談に対応。分かりやすく・笑顔で相談に乗れるよう心掛け、迅速・丁寧な対応で依頼者からの信頼も厚く、リピートや紹介での依頼も多い。相続関連書籍の執筆協力やセミナー・研修等の講師実績も多数あり。