遺産相続トラブル事例5選!円満相続のための対処方法を専門家が解説
遺産相続の場面では、さまざまなトラブルが発生しやすいので注意が必要です。
・親の死後、仲の良かった子ども達がいがみあう「争続」
・相続税が過大になってしまい、払えない
・親の老後の財産管理がうまくできなくてトラブル発生
・田舎の実家を相続して子どもが管理や処分に困ってしまう
遺産の価額が少なくてもトラブルは発生します。
誰にとっても他人事ではありません。
今回は遺産相続でよくあるトラブルを5パターンご紹介するとともに、適切な予防方法や対処方法を専門家が解説します。
これから相続を予定している方、既に相続された方はぜひとも参考にしてみてください。
遺産相続でよくあるトラブル事例5選
遺産相続では、以下のようなトラブルが発生するケースが多々あります。
以下でそれぞれみていきましょう。
1.不動産の分け方で合意できずにもめてしまう
遺産に不動産が含まれていると、非常にトラブルが起こりやすいので注意が必要です。
不動産は、現金や預貯金のように細分化できないため、誰が取得するかでもめてしまうケースが多いのです。
また「不動産を残したい相続人」「売却してお金で分けたい相続人」がいて、意見が対立してしまうことも少なくありません。
不動産の分け方でもめると、家庭裁判所での遺産分割調停や審判となり、相続開始後何年間ももめてしまうケースがよくあります。
対処方法
不動産相続に関するトラブルを防止するには、生前に「遺言書」を作成しておく方法が有効です。
遺言書で不動産の相続人を指定しておけば、死後に子ども達が遺産分割協議を行って分割方法を決める必要がありません。
遺産分割に関するトラブルが発生する余地がなくなります。
遺言書を作成するときには「公正証書遺言」を利用しましょう。公正証書遺言は、公証人が職務として作成した公文書になります。
自筆の遺言と比べて、「無効」になるおそれが格段に小さくなり、より確実に遺言内容を実現しやすくなるでしょう。
作成した原本は公証役場で保管されるため、紛失の心配もありません。
遺言作成について詳しく知りたい方はこちら
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2.不要な不動産を相続して管理や処分に困る
親の遺産相続の際、子どもが不要な不動産を相続して困ってしまうパターンがあります。
例えば、東北地方の実家を千葉や東京など関東圏にお住まいの子どもが相続するケースを思い浮かべてみてください。
遠方なので自分で管理するのは難しく、かといって不動産管理会社に管理を委託すると費用も発生するでしょう。
放置していても毎年固定資産税が発生します。
空き家になれば、倒壊や放火などのリスクもあります。
売却活動にも手間がかかりますし、売れるかどうかも定かではありません。
対処方法
将来、子どもに不要な不動産を相続させてしまう可能性のある方は、できるだけ生前に処分しておくようお勧めします。
たとえば田舎に複数の不動産を持っている場合、居住物件以外は売却しましょう。
あるいは活用する方法もあります。
賃貸アパートを建築したり駐車場として貸し出したりして収益を得られるようにしておけば、子ども達も相続しやすくなるでしょう。
売却が難しいような山林や土地であれば、その周囲の住人の方に無償でもいいのでもらってもらうということもあります。
子ども達が複数いる場合には、遺言書を作成して誰が相続すべきか明らかにしておくべきです。
そうでないと、押し付け合いや取り合いとなって、遺産相続トラブルにつながってしまいます。
なお、相続した実家を子どもが売却するときには、譲渡所得税を控除してもらえる特例を利用できる可能性があります。
細かい適用要件があるので、迷ったときには税理士に相談することをおすすめします。
3.借金などの負債を相続して困ってしまう
親が負債を残すと、相続人である子どもや配偶者が支払をしなければなりません。
以下のような負債はすべて相続の対象です。
・借金(ローン、キャッシング、クレジットカード)
・未払い家賃
・未払い通信料
・未払いの水道光熱費
・滞納税
・滞納健康保険料
相続人が払わないと、裁判されたり差押えに遭ったりする可能性もあります。
対処方法
子ども達が借金を相続しないためには「相続放棄」や「限定承認」が有効です。
相続放棄したら負債も資産もすべて相続しません。
限定承認すると、遺産全体がマイナスになった場合には相続せずに済みます。
ただし、相続放棄や限定承認は、「相続開始を知ってから3ヶ月以内」に行わねばなりません。
急いで対処しないと借金を相続せざるを得なくなる可能性があるので、急ぎましょう。
あるいは親が生前に債務整理をして借金問題を解決しておく方法もあります。
ただし税金や健康保険料は債務整理をしても減免してもらえません。
最適な対処方法については、専門家に相談しましょう。
4.高額な相続税が発生する
相続発生後、高額な相続税が発生して子ども達が困ってしまうパターンもあります。
遺産相続すると、「基礎控除」を超える部分に相続税がかかります。
【基礎控除】
3,000万円+法定相続人数×600万円
相続税は、基本的に「相続発生から10ヶ月以内」に申告・納税しなければなりません。
納税資金を用意できないと、税務署から督促されたり財産を差押えられたりする可能性もあります。
対処方法
高額な相続税が発生しそうなご家庭では、生前からしっかり節税対策をしておきましょう。
子どもや孫に生前贈与をしたり、生命保険に加入して死亡保険金を相続人に受け取らせたりするだけでも、相続税額を大きく抑えられるものです。
現預金がある方の場合、不動産を購入したり不動産を賃貸に出したりすると、それだけで大きく相続税評価額が下がって税負担を軽減できます。
また、相続税の申告時、節税方法に詳しい税理士に相談することも重要です。
適用できる控除制度を正しく適用するだけで、税額が大きく変わってくる可能性があります。
相続税対策に関心のある方は、詳しい税理士に相談してみましょう。
5.親の財産の使いこみが発覚する
相続が発生したとき、「親の財産使いこみ」が発覚してトラブルになるケースも多々あります。
親と同居していた子どもが勝手に親の貯金を自分のために使ってしまうパターンです。
使いこみが発覚すると、同居の子どもは使いこみを否定し、別居の子どもは激しく責め立てるでしょう。
遺産分割協議すら開始できません。最終的には裁判になり、泥沼の争いになってしまいます。
対処方法
使いこみが発生するのは、高齢になった親の財産が適切に管理されていないためです。
特に親が認知症になると、ご自身で適切に財産管理できなくなって同居の子どもが預貯金を管理する状態になりがちです。
そうなると、別居している子どもから「使いこみ」を疑われたり、実際に使い込んだりしてしまうトラブルが発生しやすくなるでしょう。
財産管理ができずに財産が散逸したり、悪質業者にだまし取られたりするリスクも高まります。
老後の財産管理を適切に行うには、以下の3種類の対処方法があります。
任意後見
親が元気なうちに信頼できる人と後見契約を交わし、認知症になったらその人に財産管理をしてもらう方法です。
法定後見
任意後見などの対策をしないまま認知症になってしまったとき、裁判所に財産管理人としての「後見人」を選任してもらう方法です。
後見人が選任されると、その人が親の財産を全面的に管理するので子どもによる使いこみや財産の散逸を防止できます。
家族信託
親が子どもや孫などの家族に財産を預けて管理してもらう方法です。
親が元気なうちは親のために財産を管理してもらい、死後は別の人(妻や子どもなど)のために管理してもらうことも可能です。
たとえば家の管理を子どもに任せ、親が認知症になって介護施設に入るときに家を売却して入所資金を用意するなどの対処もできます。
死後、指定した人に財産を受け継がせられるので、遺言書代わりにも使われています。
家族信託をうまく使うと、いろいろな希望を実現できます。
関心のある方は、家族信託に対応できる司法書士や弁護士などにご相談ください。
家族信託についてはこちらのページに詳しく載っています
↓画像をクリックすれば詳しいHPに飛びます。
まとめ
遺産相続の場面では、不動産を巡るトラブル事例が多数発生します。
遺言書の作成、不動産の活用、売却、贈与などの対応により、効果的な相続対策が可能となるでしょう。
司法書士は不動産や遺言書の専門家です。
相続トラブルが心配な方は、是非とも一度ご相談ください。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士 オールシップ
代表
市山 智
- 保有資格
司法書士 行政書士
- 専門分野
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相続・遺言・成年後見・民事信託
- 経歴
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相続・遺言・生前対策を中心に取り扱う「司法書士法人・行政書士オールシップ」の代表。相続関係の手続きや成年後見等の財産管理など、年間300件以上の相談に対応。分かりやすく・笑顔で相談に乗れるよう心掛け、迅速・丁寧な対応で依頼者からの信頼も厚く、リピートや紹介での依頼も多い。相続関連書籍の執筆協力やセミナー・研修等の講師実績も多数あり。