遺産分割協議の失敗事例 | 遺産分割協議 | 浦安・市川相続遺言相談室
遺産分割後、共有持分を売買する
両親の残した自宅を兄の健太さん(仮名)と妹の佐代子さん(仮名)が相続し、現在は健太さん一家が住んでいます。
相続した時の持分割合は健太さんが4分の3、佐代子さんが4分の1ですが、数年後、自宅の老朽化に伴い、建替えを検討することに。
しかし、土地が佐代子さんとの共有のままでは、抵当権の設定に佐代子さんの承諾が必要となることが判明したのです。
結局、健太さんは佐代子さんの土地持分を1000万円で買い取ることになりました。
その結果、
健太さんの負担……土地購入代金1,000万円、不動産取得税、登録免許税
佐代子さんの負担……土地売却に伴う譲渡税(原価5%と考えると190万円)
の経費が発生しました。
佐代子さんは兄弟の間ですから「もっと安くてもいい」という気持ちでしたが、兄弟間の売買の場合は、時価で売買しないと贈与税がかかってくる恐れがあるということで時価による売買となりました。
(※以上は遺産分割協議の失敗モデルケースです。実際の事例とは内容を変えて掲載しています。)
納税などの関係で、遺産分割を急いでしまう
孝さん(仮名)の亡くなったお父さんは、住居と土地、駐車場、賃貸住宅とその土地という合計3つの不動産を残していました。
それらを相続したのは、妻(孝さんのお母さん)と子供3人(孝さん、壮太さん、太一さん)です。
それらの土地には、面積や立地条件に若干の違いがあったことと、相続税の納税の関係で分割を急いだ結果、すべての土地建物を各相続人が4分の1ずつ共有することで遺産分割しました。
後日、賃貸住宅の建替えを機に遺産分割のやり直しをすることになり、法律的には問題がなかったものの、税務上の問題が起きる可能性があったため、 結果的には「固定資産の交換の特例」による持分の交換で対処することになったのです。
また、子供3人に対して土地持分の取得に伴う不動産取得税と登録免許税、さらには交換した土地に評価の差があるため、差額分に対して贈与税がかかってしまいました。
(※以上は遺産分割協議の失敗モデルケースです。実際の事例とは内容を変えて掲載しています。)
≪「とりあえず共有しておこう」は後で悔いを残すことに≫
この二つのケースは、兄弟・親子間ということもあって、ごく自然な成り行きでとりあえず共有して遺産分割するというよくある例です。
ところが、建替え問題等が後になって発生して、本来払わなくてもいい税金が余計にかかってしまったのです。
二つの事例の対処法として、ケース1では、土地を健太さんが、金融資産を佐代子さんが相続しておけば、土地購入に伴う不動産取得税と登録免許税はかかりませんでした。
その際、土地評価額と金融資産の差額を「代償分割」することで、後日の手続きも必要なかったと考えられます。
ケース2では、居宅の土地には孝さんの家族と両親の二世帯が建っていた前提もあり、孝さんのお母さんと孝さんが住宅と土地を相続し、残りの子二人は別々に駐車場と賃貸住宅の土地・建物を相続しておけば良かったと考えられます。
このように、急な相続発生で気持ちも動転して「とりあえず共有しておこう」と遺産分割してしまうのは、将来のことを考えるとやや早計かもしれません。兄弟姉妹は仲がよくても、時間の経過とともに状況が変化することもあります。
やはり、当初から相続に精通している司法書士に相談して、後に悔いを残さない対策をとっておくことがポイントのようです。不動産の遺産分割の共有には、より慎重に対応するのが賢明と言えるでしょう。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士 オールシップ
代表
市山 智
- 保有資格
司法書士 行政書士
- 専門分野
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相続・遺言・成年後見・民事信託
- 経歴
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相続・遺言・生前対策を中心に取り扱う「司法書士法人・行政書士オールシップ」の代表。相続関係の手続きや成年後見等の財産管理など、年間300件以上の相談に対応。分かりやすく・笑顔で相談に乗れるよう心掛け、迅速・丁寧な対応で依頼者からの信頼も厚く、リピートや紹介での依頼も多い。相続関連書籍の執筆協力やセミナー・研修等の講師実績も多数あり。